計算例(その2)


シャノンの悪魔では売買のタイミングとして株価が2倍に値上がりするときや半分になるときのような極端な場合を考えたので、 もう少し現実的な場面を想定してシミュレーションをしてみます。
まず、元手の資金を10,000円とし、x=0.2、 R1=R2=0.1、つまり毎回資金の2割を投資して10%上がれば利益確定、 10%下がれば損切りをし、これをn=10回繰り返します。また確率pを0から1まで0.1刻みで変化させ、 それぞれの場合の手残り資金の数値シミュレーションおよび理論的な期待値、最頻値を調べます。 数値シミュレーションの実験では前と同様に一様乱数を用い、20人の投資家が同時に投資したとして20人の平均を取り、これを10回繰り返します。 次の表はその計算結果です。

equation1-1

上の表で、p=0.5のときの期待値を見ると、理論上損も得もしないので10,000円のままですが、最頻値は10,000円を切っています。これは、5勝5敗なので 10,000*(1+0.1*0.2)5*(1-0.1*0.2)5=9,980となるので、必ず元の資金より小さくなるからです。
下の図はシミュレーション結果をグラフ化したもので、横軸は確率p、縦軸は10回売買した後の手残り資金です。図には期待値、最頻値の理論値と 乱数シミュレーションの平均値をプロットしていますが、これら三つのグラフはほとんど重なっています。 しかし実際にはシミュレーションの値は平均値とはかなり離れたところまで分布し、 ばらつきが大きいのです(シャノンの悪魔のときよりは小さいですが)。実際に投資するときも、理論曲線のようになるというのではなく、 ばらつきがあるのであくまで平均というように考えた方がよいと思います。
また下の図から、p=0.5では ほぼ開始資金の10,000円と同じで、p>0.5ではそれよりもプラス、p<0.5ではマイナスになっていることがわかります。

equation1-1

同様に、下の図はR1=R2=0.1, x=0.8 と、 資金の8割を投資に回した場合のシミュレーション結果です。 xがより大きくなったので、p<1/2ではx=0.2の場合より大きく沈み、p>1/2では利益が大きくなっています。 やはり最頻値と期待値、乱数シミュレーションの平均値の結果はほとんど重なっていますが、 シミュレーションでかなりばらつきがあるのは前と同じです。

equation1-1

なお、前にも述べたように、株式投資にいてN回投資したときの残高期待値は、

equation1-1

とあらわせたのですが、利益確定と損切りラインを同じパーセントに設定したとすると、R1=R2=Rとおいて
equation1-1

となります。期待値が開始資金Aより大きいためには当然ながらp>1/2が絶対条件です。

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