シャノンの悪魔の計算例



下図は先ほどのシャノンの悪魔の例題で、開始時の資金を1,000ドル、n=10回投資した後の資金状況です。 R1=1、R2=0.5とすると最頻値(ケリー基準 (-〇-))はx=0.5のとき最大となっていますから、 手元資金の半分を株に投資し、残り半分を現金で持つ戦略が一番大きい利益が得られることがわかります。これはp=0.5の場合ですから、 勝ち負けで言うと5勝5敗の場合だけを取り出して結論を導いたものです。
下図にはまた、期待値のグラフ(-▲-)も載せており、こちらの方はxが大きいほど増加する指数関数のような曲線となっています。 期待値では、勝ち続けたときは最大で開始資金の1024倍もの利益が得られるのに対し、負け続けても開始資金以上に損をすることはありませんから 、勝ち続けたときの方に平均値が移動するので、xを大きくした方が利益も大きくなるのです。

equation1-1

つぎに、EXCELでシャノンの悪魔の数値実験をしてみます。まず投資家を20人登場させ、各投資家が1,000ドルの元手で 勝率p=0.5の投資をn=10回、するとします(反復計算を使います)。そのために各投資家には毎回、RANDBETWEEN関数で0から9までの一様乱数を発生させ、 その結果によって勝ち負け(株値が2倍に上昇するか、半分に下落するか)を決めます。具体的には、乱数が0~4だと勝ち、5~9だと負け、 というように決めておくわけです。そして勝ちであれば(1+R1x)を、 負けであれば(1-R2x)を、IF関数を使って場合分けをし、その都度資金に掛けていきます。 10回の計算が終わったら、20人の投資家の手元に残った資金の平均値を出します。
この平均値はまだばらつきがかなりあるので、 同様の計算を10回行って行って平均値を求めます。そのような計算を、xの値を0から1まで0.1刻みで増加させながら行うわけです。計算結果を下の表に示します。 なおこの計算は、計算対象としては期待値を出していることになります。

equation1-1

表の結果をグラフにしたものを下の図に示します。EXCELによる数値実験結果は個々の試行回ではばらつきはあるものの、 10回平均の値(破線)は期待値の理論値(-▲-)とかなり良く一致していることがわかると思います。

equation1-1

なお、p=0.5だと5勝5敗が最も起こりやすいケースで、それが最頻値のグラフです。しかしEXCELの数値実験でも5勝5敗が 多いかというと、実感としてそんなことはありません。理論的にも起こる確率は約25%です。回数を少なくしてn=4としても2勝2敗となる最頻値の確率は、 37.5%ですから圧倒的に多いとは言えません。そして、勝ち負け同数からずれたときの手残り資金の結果にはかなりの差が生じてきます。
結局、シャノンの悪魔を成り立たせるためには、その前提の通り、勝ち負け同数に持っていくことが重要ということが言えます。 しかし、現実には株価2倍と1/2倍が同じ確率p=0.5で頻繁に起こる銘柄など滅多にないと思いますが。

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