ケリー基準の計算例
それではケリー基準を計算例でみてみましょう。次の図は開始時の資金を10,000円、n=10回の投資を、
R1=R2=0.2、p=0.7という条件で行い、
手元に残った資金の最頻値(ケリー基準(-〇-))と期待値(-▲-)を計算したものです。ケリー基準の式よりx=2のときに最頻値が最大になるとの結果が得られますが、
x≦1なので最頻値、期待値ともに0≦ x≦1の範囲では単調増加となっています。
また次の図は同じく開始時の資金10,000円、n=10回の投資をR
1=0.5、R
2=1、p=0.8の条件で行った例で、
この場合は手残り資金の最頻値はx=0.4のとき最大となっていて、利益が最大になることが見て取れます。ただし期待値の方は単調増加しています。
このように、最頻値が最大値を持つのに期待値は持たない理由は、ケリー基準の式で負けたときの項(1-R
2x)の中身が0に近いと
全体としても0に近くなるのですが決して負にはなりません。つまり元の資金以上に負けることはないのです。
一方で勝ったときの項
(1+R
1x)が1より大きいと、勝ちの回数が多いときには元の資金の何倍にも増えます。
起きる確率は小さくても増加量が大きいため全体の平均値、つまり期待値を引き上げてしまうのです。
ケリー基準でxが最大値を持つのは、最頻値を考えた場合だけで、バラツキを含めた平均値である期待値はそうはならないのです。