一般化したケリー基準

■ケリー基準


先に述べたケリー基準はギャンブルのときの賭け方で、負けたときには賭けたお金はすべてなくなってしまいます。
ここでは株式投資も含む一般の場合を考え、勝つ確率をpとして、勝てば投入資金のR1倍の利益を得、 負ければR2倍のお金を損切りするとします。N回の投資で勝ちがn回、負けがm=N-n回とするとN回の投資の後、 手元に残るお金は
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となります。ギャンブルの場合はR1=R, R2=1と置けばよいわけです。 このように一般化したケリー基準の式では、f(x)は

equation1-1

と書けます。この式をxで微分すると

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となるので、f(x)が最大となるxの値は次のようになります。

equation1-1

この式はR1=R, R2=1とすれば 当然ながらギャンブルのときのケリー基準に一致します。 またR1= R2=Rとすればf(x)が最大となるxの値は

equation1-1

となります。つまり、利益確定と損切りが同じ騰落率Rのときは、確率pは1/2よりも大きくないとならないことがわかります。 また、f(x)が最大値を持つためには

equation1-1

とならねばなりません。これが成り立たないと、f'(x)は常に零か負なので資金は減る一方ということになります。

■期待値


ここで最初の式であらわされる投資の期待値を考えてみましょう。 ダランベールで二項分布を説明したときに出てきたのですが、N回賭けをしてn回勝つ確率は

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であらわされました。従ってN回の投資の後、手元に残る資金の期待値<E>は

equation1-1

ここで、二項係数NCnは(p+q)のべき乗(p+q)Nを 展開したときの、pnqN-nの係数であることを思い出せば、

equation1-1

であることがわかります。 期待値が元の資金Aより増える条件は上の式の[  ]の中が1より大きいことですが、x>0なので

equation1-1

がその条件となります。これはケリー基準(最頻値)の条件とまったく同じです。 ただし、意味するところは少し違っていて、ケリー基準では最頻値が最大値を持つ条件だったのに対して、 期待値では資金が増加していく条件です。なお、上がるか下がるか五分五分の投資の場合は、 p=1/2なので上の式に代入するとR1>R2が導けます。 つまり儲けを期待するなら、同じ確率1/2でも利益確定の配当率がロスカットの損切り率よりも大きくなければならないということです。
ちなみに、<E>をxで微分してみると

equation1-1

なので、前記の条件

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が成り立てば、<E>は最大値を持たず、期待値はxが大きいほど大きい、 従ってx=1つまり全額投資がよいという結論になります。このように、 利益が最大となるxが最頻値では存在するのに対し、期待値では存在しません。

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