ケリー基準

10%法は常に資金の10%を賭けていくものでしたが、資金の何倍を賭ければ一番合理的かということを調べたのがケリー基準です。 毎回の勝負に資金のx倍を賭け、配当率がRであるとします。N回の賭けでn回勝ち、m回負けたとすると、後に残るお金AN

equation1-1

となります。両辺のN乗根を取れば

equation1-1

N→∞のときを考え、最初の係数を除いたものをf(x)とすると

equation1-1

となります。ここでpは勝つ確率で、N→∞のとき大数の法則よりn/N→p、m/N→1-p に近づきます。 このようにおいたということは、勝つ回数nの値をN×pとおいたということで、f(x)は最頻値に基づいた評価ということになります (最頻値となるnは正確には(N+1)pを超えない最大の整数です)。 x=0のときにはf(x)が1になりますが、これは、何も賭けないということですから除きます。 また全額を賭けた場合がx=1で、それ以上は賭けられませんから、x≦1です。 賭けで資金が減らないためにはf(x)は1以上でなければなりません。そこで0<x≦1の範囲でf(x)が最大となる条件を求めよう、 というのがケリー基準です。
そのため、f(x)をxで微分すると

equation1-1

ここで0<x≦1だから、式の[ ]以外の項は負になることはないのでf'(x)=0を解くと

equation1-1

のときにf(x)が最大になることがわかります。ここで、Rは配当率(オッズ)で、p≦1です。 p=1のときはx=1で、必ず勝つのだから全額かけてよいことになります。
x>0だから

equation1-1

であれば、f(x)は極値、すなわち最大値を持ちます。この式が成り立たなければf'(x)は常に零か負なので資金は減る一方ということになります。 また、Rのかわりに元の賭け金も含んだ倍率R’を用いるとR'=R+1だから、xは

equation1-1

とあらわせます。 ここで注意すべきことの一つは、ケリー基準は最頻値だけを考えていることです。平均してその確率通りの賭けだったとしても、 実際には勝ち続ける人から負け続ける人までかなりばらつきがあり、 賭けの回数Nが大きいほどばらつきの程度(自乗平均値)も大きくなります。 例えば勝つ確率pが0.5だと最頻値の場合は勝ち負け同数ですが、10%法の表を見ればわかるように10回の賭けでぴったり5勝5敗になる確率は、 約25%程度です。5勝5敗になるケースが最も頻度が高いものの、残りの75%は勝つか負けるか、どちらかの方が多いのです。 従って実際には、ケリー基準を使えば儲かるというよりも、代表例ぐらいに考えるのがよさそうに思います。
もう一つは、 (R+1)p=1、つまり期待値が0になるような賭けの場合には、上の式よりx=0となるので、 賭けない方が良いという結論になります。(R+1)p>1となるような、Rやpでないとケリー基準は成り立たないのです。

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