期待値と最頻値

ただし、実際問題としてこの10%法が統計的に見て必ず損をする方法なのか、という問題はあります。 確かに、勝つ回数と負ける回数が同じ場合には必ず損をするのですが、これを期待値で見てみましょう。 下の表は10回賭けをしたとき、勝つ回数をn=0~10として変化させたときの起こり得る個々の確率と全体の期待値を求めたものです。

equation1-1

10回のうちn回勝つ場合の組み合わせの数は10Cnで、nを0から10まで変化させたときの 10Cnをすべて足し合わせると1024になります。 従ってn回勝つ確率pnは、10Cn/1024です。 元の資金は10,000円なので、n回勝つときの損益bnは10000×{(1+0.1)n(1-0.1)(10-n)-1}です。
表の一番下の行を見るとpnとbnの積和を取って計算した期待値は0になっています。 つまり平均的な損益は0なのです。損も得もしません。

以上のことから、10%法は必ず負けるとは言えず、平均的に言うと損益0です。勝ち負けの回数が等しいときはマイナスになりますが、 勝ちの回数が多くなるほど利益が乗ってくるのです。例えばn=7とn=3を比べると起こりうる確率は同じなのにn=7のときの利益は n=3の損失を上回っています。最も起こる確率の高いn=5のときがマイナスになっても、n≧7で勝ったときの利益が負けたときの損失よりも大きいので、 トータルすると期待値が零になるのです。
従ってギャンブルの場で10%法は、
「勝ち負け同数のときは若干マイナスになるが、負けるときの資金の減り方は緩やかで、大きく勝ち越したときには資金の増え方が割と大きい」
ということになるでしょう。

なお、n=5の場合が最も起こりうる確率が高くなりますが、そのような場合の値(ここでは損益)のことを最頻値といいます。 それでは期待値と最頻値はどちらを重視すればよいのでしょうか?  期待値では極端にかけ離れたデータがあると、それを含めて平均化した値になります。 たとえばマーチンゲールで負け続けたような場合です。ただし起こる確率は小さくても起きてしまえば手痛い被害を被るリスクを考慮したことになります。 最頻値は最も起こりやすい場合なので、滅多に起こらないようなリスクは考慮していません。 たいていの場合はこう考えてもそれほど大きな間違いはないだろうという程度です。 結局どちらも重要な情報ですので、できるだけ両方調べておくことが望ましいですね。

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