配分型投資術(1)



① 10%法 ② 期待値と最頻値 ③ ケリー基準 ④ 一般化したケリー基準
⑤ ケリー基準の計算例 ⑥ シャノンの悪魔 ⑦ シャノンの悪魔とケリー基準 ⑧ シャノンの悪魔の計算例
⑨ 計算例(その2) ⑩ サンプトペテルブルクの逆説

配分というのは、一般にはいわゆるポートフォリオのことで、リスク管理のために自己の資産を複数の金融商品に分散させて投資することを言います。 しかしここでは複数銘柄という意味ではなく、手持ち資金の内のどのくらいの割合を一回の投資につぎ込むのが合理的か、という視点で考えてみます。 ギャンブルでも、当然のことながらすべての資金を一度に投入するわけではありません。何分の一かずつを賭けていくのですが、 その最適な割合の決め方が研究されています。代表的な例にケリー基準があります。 以下、そのような方法を紹介しながら、株への応用が可能かどうかを調べてみます。

10%法

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10%法とは、ギャンブル攻略法の一つで、賭け金をつねに資金の10%にする方法です。一回の賭け金の割合が少ないので、負け続けても資金の減少は緩やかです。 すぐに全てをなくすことはありません。一方で、波に乗って勝ち続ければ、利益を積んでいくことができ、あまり欲張らずにゲームを楽しむのに向いているようです。
この10%法の説明をインターネットなどでときどき見るのですが、たいてい利益がプラスになって終わっています。その場合は、 勝ちの回数の方が多くなるようにサンプルを作ってあります。しかし、この方法は、勝ち負けの回数が同じ場合には損益がマイナスになるはずです。
次の例でシミュレーションしてみましょう。 ここでは、元の資金を10,000円、勝ち負けの確率は等しく1/2で、毎回資金の10%を賭けます。勝ったときの配当率Rは1倍(賭け金を含めれば2倍戻ってくる)とします。 10回の勝負で最初5回は続けて勝ち、後の5回は負けとしたときの計算結果が下の表です。

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結果をみると、10回目には元の10,000円を割っているのがわかるでしょう。それもそのはずで、勝つ回数と負ける回数が等しいとすると、理屈の上では必ず負けるのです。 いま元の資金をAで勝つ回数と負ける回数をともにnとします。2n回賭けの後、資金は

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となりますから、必ず元のAよりも少なくなります。n=5とすると(1-0.01)5≒0.951 ですからA=10,000円のときの残高は9,510円となり、 表の結果はちゃんと勘定があっています。

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