一般的なギャンブルの法則
これまで調べたギャンブル攻略法では、期待値がすべて零になりました。つまり、個別には損する場合も得する場合もあるでしょうが、
平均的には損益が零になるというのです。ではどういう条件でそれが成り立ったのでしょうか。これをマーチンゲールの場合で調べてみます。
マーチンゲールでは、賭け金1に対して勝てば1儲かる、つまり賭け金の1と合わせて2戻ってくるとしていました。
このときの呼び方ですが世の中の説明には若干混乱があるようです。ルーレットなどでは賭け金1に対して2倍になって戻ってくるとき、
配当2倍として賭け金も含めている場合と、配当1倍、1対1などと記している場合があります。
一般にギャンブルで使われるオッズはOf =(成功数)/(失敗数)と定義されていて、確率的にはある事象の起こる確率、
例えば勝つ確率をpとすると失敗確率は1-pなので
となります。これをオッズ比とも言います。またO
f の逆数の
逆オッズO
a も定義されていて
です。勝つ確率p=1/2のときはO
f もO
a も1です。
p=0.2、つまり5回に1回勝つ確率の場合は、O
f =0.25、O
a =4となって、
その場合には配当金として4を受け取ることになります。元の賭け金1を加えれば5です。
p=0.8の場合はO
a =0.25を受け取ります(25%の利益を得るということです)。元の賭け金1を加えれば1.25ですね。
このようにO
a は元の賭け金に対する配当の倍率をあらわしています。
なお、ウイリアムパウンドストーン著「天才数学者はこう賭ける」(青土社)ではO
a のことをオッズと呼んでいて、
競馬の場合はこちらを使うようです。
さて、配当率をR、勝率をpとして一般化したマーチンゲールを考えてみましょう(前はR=1、p=1/2でした)。
1回だけの賭けだと、賭け金1に対して、
勝った場合の利益はR、その確率はp、負けた場合の損は1、確率は1-pですから期待値<E>は
期待値<E>が零となる条件から
ですから、これは逆オッズO
a に一致します。つまり理論的なオッズは、
期待値が零で平均的には損も得もしないように決められていることがわかります。
今度はマーチンゲールで、負けるたびに掛け金を2倍にしていく場合を考えてみます。
n回賭けた結果すべて負けた場合は、累積損失が2
n-1となり、
そのときの確率は(1-p)
nなので期待値のうちの負け分は
となります。つぎにn回目までのどこかで勝つ場合の期待値の成分をすべて加え合わせると
となります。期待値が零となる条件は、負けの分と勝ちの分を加えて零と置いて
これより
または
従って、1回だけのときと同様、配当率RがO
a に等しければマーチンゲールの期待値は零になることがわかります。
なお、R+1は元の賭け金を含めた倍率です。
これは当然のことで、n回目で期待値0の状態から賭けをスタートすると考えると、
上の式が成り立ってさえいればn+1回目も期待値が0になります。
これはマーチンゲールでもパーレーでもダランベールでも成り立っています( R=1, p=1/2 )から、期待値が零になっていたのです。
なお、実際の配当率には胴元の取り分が加味されます。ルーレットではアメリカンスタイルの場合、0と00、1から36までの数字の38種類が賭けの対象ですから、
1点賭けだとp=1/38となります。その場合、O
f =1/37、O
a =37ですから配当率R=37で期待値0となりますが、
実際は胴元の利益を確保するため、配当率をR=35としています。