マーチンゲール式買い下がり
ギャンブルのマーチンゲールでは、負けるたびに前の賭け金の2倍の額を次の賭けにつぎ込みましたが、株の場合は適当な騰落率rを決め、
例えばr=0.1、つまり10%株価が下落するたびに2倍の株数を買い増す、とします。
簡単のため、最初の購入株数を1株 ( 1単元のこと )とします。
その後続けてn回買い増しをして、全部でn+1回株を購入したとすると、総株数は
と増えていきます。一方、購入額は元の株価をAとして
ですから平均単価は
となります。例えば最初1株購入したところrだけ下がったので2株買い増しして合計3株にしたとすると、
購入額はA+2(1-r)A=(3-2r)Aですから、平均単価はn=2として
となります。これはダランベールのときと同じです。ダランベールも最初は2株買い増ししたのですから当然ですね。従って株価が1/3戻せば損益が0になります。
株価がさらに戻して、Aに戻ったときには1株で(2/3)rA、合計3株持っているので2rAの利益が生まれます。
それでは、nがさらに大きくなったときはどうでしょうか。
ですから、一回前に買い増ししたときの株価 と比較すると
となります。rが小さいときはほぼ1です。つまり、一回前の買い増し時の株価とほぼ同じで、若干それよりも大きくなります。
例えばr=0.1のときは1.25%ほど高いだけです。rの値が大きくなると少し差が大きくなりますが、 r=0.1程度では誤差はそれほど大きくはありません。
つまり株価がrずつ下落するごとに、マーチンゲール式に2倍の株数を買い増ししていけば、
平均単価が一回前の買い増し時点の株価になり、そこまで株価が戻れば損失が零になるということです。
例としてA=1000円、r=0.1として、マーチンゲールで買い増ししたときの平均単価を次表に記します。
ここで平均単価は近似ではなく、購入額合計を株数の合計で割った正確な値です。
この表でn=1のときをみると、値下がり幅100円に対してその2/3の933円ところに平均単価が来ていることがわかります。
また、買い増し回数nを横軸にして、株価と平均単価のグラフを描いたのが下の図です。全体的に見れば平均単価はそのときの株価より少し上で、
前回の買い増し時(一つ前のnの値のとき)の株価にほほ近いことがわかるでしょう。
横軸のnは買い増しの回数ですが、マーチンゲールで10回も続けてナンピンすれば、購入額がとんでもなく跳ね上がりますから、
現実的には数回程度のものでしょう。
ただマーチンゲール式の購入では、株価が最初の買値やその半値戻しまで戻らなくても、
1回前の買い増しのときまで株価が戻れば、零かあるいは利益が出せるところまで回復するということです。
株価がそこまで戻るということは、現実的には大いにありうる話なので、その意味では魅力的な戦術だと思われます。
ただし、賭けごとのマーチンゲールと同じで、予想に反して下落し続ければ大きな損失を生むので、先行きの見通しは大事です。
まとめると
株価が下落する局面で、一定の比率rだけ下がるごとに買い増しをするとします。このとき概略次のことが言えます。
- 株数一定で買い下がったとき、値下がり幅の半値まで株価が戻すと損失はなくなる。
- ダランベール式に買い下がると、値下がり幅の1/3まで株価が戻せば損失はなくなる。
- マーチンゲール式に買い下がると、一回前の購入時まで株価が戻せば損失はなくなる。
- 株価が上昇する局面で買い上がったとき、上記1~3はそれぞれ逆のことが言える。