ドルコスト法

ドルコスト法は、前述したように毎回購入する金額を一定とする方法です。持株会のように月々5000円とか1万円といった 少額の購入では売買単位の100株とか1000株とかの株数は買えませんから、その金額に見合う単位未満株(端株)を月々積み立てていくのです。 売買単位以上になれば会社に届け出て売却することもできます。 さて、期間Tの間にN回ドルコスト法で積み立てるとしましょう。 毎回積み立てる金額をS、購入時点での株価をai、購入株数をmiとすると 、S=ai×miだから、mi

equation1-1

となります。従って一株あたりの単価yは総購入額NSを総株数で割って

equation1-1

となり、これはa0, a1, ..,aN-1に対する調和平均となります。 株価aiが高ければその逆数1/aiの値は小さくなり、分母に対する寄与度も低くなります。 逆に株価aiが低いほど分母に対する寄与が大きくなり、かつ分母の値が大きくなるので株単価が低くなるというわけです。 つまりドルコスト法のメリットは、この調和平均の原理によるものといえるでしょう。 各種平均法では、「算術平均≧幾何平均≧調和平均」の関係があるので、一株当たりの購入単価は必ずドルコスト平均法の方が低くなります。 つまりドルコスト法は算術平均法より常に有利なのです。ただし特別の場合として、期間Tの間で株価が一定で変わらない(aiが一定)とすると、 両者に違いは生じません。 ドルコスト法は、特に株価の変動が予測不能の場合には有力なとされています。 むろん株価が一直線に下落を続ければどんな方法をとっても損失となるので、万能の方法というわけにはいきません。 そのような株は買わないのに限ります(わかっていればの話ですが)。
それではドルコスト法は算術平均に対してどの程度有利なのでしょうか。前と同じように期間Tで株価が正弦波的に変動するとします。 株価aiは前と同じで

equation1-1

とあらわせます。これを前の式に代入すると調和平均として

equation1-1

となります。これが、株価が正弦波で変動するとしたときの、ドルコスト法による購入単価です。 この値はEXCEL等を用いれば簡単に計算出来ますが、ここではテーラー級数による近似値を導いてみることにしましょう。 途中を省略しますが、最終的に、次のような式が得られます。

equation1-1

正弦的な変動の場合、算術平均の平均単価がy=Aですから調和平均ではそれよりもおよそB2/(2A)だけ単価が低くなります。 例えば、A=1000円、B=300円とすると、ドルコスト法の平均単価は955円でB2/(2A)は45円となります。 つまりそれだけ単価が低く抑えられるので、値上がりしたときの売却益を大きくすることができるわけです。 EXCELで正確に計算した値は46円ですから、この近似式の精度はかなりよいことがわかります。なお、これは1株での話ですから、1000株では45000円になります。

私が持株会に入っていたとき、10年ほどの間でしたが、会社の株価は安いときで500円、高いときには1000円くらいでした。 バブルのときは瞬間的に1400円まで上がりましたが、平均すると700円台だったように記憶しています。 データを取っていたわけではないので大体の数字ですが、この期間に株価が正弦波的に変動していたと仮定しA=750円、B=250円とすると、 ドルコスト法による平均単価は708円となって算術平均より42円安く買えたことになります(正確に計算すると43円です)。 前にも述べたように、この株は退職してから7年後くらいに、1000円を超えたところで売却したので、結構な利益となりました。

それでは、株価が直線的に変化した場合はどうでしょうか。計算の都合上、i回目の購入額aiを 算術平均値Amからのずれ分であらわすと、これも途中を省略して

equation1-1

となります。最初のAmは算術平均の単価ですから、それに比べておよそ

equation1-1

だけ購入単価が低くなります。例えばA=100円、B=6円、N=10回として考えてみましょう。 スタート時点が100円で、106円、112円と、6円刻みで10回、最後は154円まで買っていくことになります。 この場合の算術平均Amは127円で、近似式で求めた調和平均だとそれより2.34円単価が低く買えることになります。 なお、正確な値は2.37円です。直線的な変化だとそれほど大きな差にはなりません。

top back next


inserted by FC2 system